ハッピーターン
飛べると、思ったのに
羽など生えていない僕にも
「踵に羽の生えたような」
地面を跳ね回りながら
ハッピーターンを決めてみようと思って
その結果、3週間の入院生活
看護婦の囀りが心の支え
オレンジ色の薔薇とカスミソウだけが話し相手
ふさがってゆく傷口 固まってゆく骨
視界は白く霞んで 窓から外を覗いても 何も
花見の狂乱とは無縁の
静かな入院生活
病院食の生活に別れを告げてはや一ヶ月
陽の差さない部屋の中で
ただひたすらに眠る
テレビも見ず
読書をするでもなく
友達と会うでもなく
ニートにすらなれない穀潰し
明日 前の職場に行って
事務処理や 気乗りのしない煩瑣なこと をしなくてはならない。
そしてその職場には いまでもあの人がいる。。
ノイズを吸収する 雪のような人が。
雪割草のように力強い 白い人が。
結局、あの人に自分の思いを伝えることができなかった。
黒い勾玉のように封じ込められていたから。
あの人には謝罪と感謝がいい足りない。
迷惑かけてばかりの僕に 玩具の指輪のような微笑をくれた。